入試課題及び出題の意図の公表

一般選抜入試の課題とその出題の意図について、春季入試分を公表しています。

令和8年度(2026年度)入試

(掲載期間:2026年4月1日~2027年3月31日)

博士課程前期2年の課程

ヨーロッパ・アメリカ研究講座

課題
出題の意図

本課題は、ヨーロッパ・アメリカ研究に関する基本的な知識、研究調査能力、議論を論理的に展開することを測ることを目的としています。いずれのテーマも、その学術的背景を調査した上で、いかなる問いを設定し、議論を展開するか、が肝要となります。各テーマの出題の狙いは以下の通りです。

  • 後の映画技法に甚大な影響を与えた「モンタージュ理論」を、「映画編集」作業一般と区別して定位し、エイゼンシュタインの前衛的な企図の美学的・思想的可能性について的確な知識を有しているか。
  • 前者(19世紀末に展開した特定の農民運動)を 後者(アメリカ史に通底する民衆主体の運動)のなかに位置付けたうえで、この運動全般がアメリカ民主主義に与えた影響を的確に説明できているか。
  • 開国以後の日本国内の政治状況を考察し、日本と外交関係を確立した、英仏を中心とする欧米列強と日本の政治勢力との関係性を的確に論じることができるか。

アジア・アフリカ研究講座1

※勝山教授の指導を希望する方向け

課題
出題の意図

中国古典小説を言語形式の違いとしてではなく、表現方法・読者層・文学的役割の差異を含めた総合的な文学史的問題として理解しているかを問う点にある。文言小説と白話小説について、代表作を挙げながらそれぞれの特徴・長所・短所を具体的に説明し、単純な優劣ではなく比較の視点で論じる力が求められている。さらに、両者の相互関係が中国小説史の発展や表現の多様化にどのように寄与したかを把握し、文学史的流れの中で位置づける理解力を測ることが目的である。

アジア・アフリカ研究講座2

※大河原教授、朱准教授、木村准教授の指導を希望する方向け

課題
出題の意図
  • 明の海禁政策について、その政策に至った経緯や特色、その後の展開などについて、知識と論述能力を問う問題である。明は海禁政策と朝貢制度を結合させた対外政策を取ったことが非常に特徴的であり、限られた字数内でその歴史的な展開ついて論じることが求められる。
  • 張謇は清末民初の政治家・実業家・教育家であり、中国近代史を考える上でキーパーソンの一人である。限られた字数内で、その経歴はもちろんのことであるが、各側面から張謇の実践をまとめ、彼の貢献と限界を提示することが求められる。とりわけ、教育面において、1903年の彼の日本視察についても言及して欲しい。
  • 現代世界のイスラーム潮流において、政治的、社会的、経済的に大きな影響力を持っているサラフィー主義(Salafism)を的確に理解できているかを問う問題です。サラフィー主義とは、その命名の由来となったアラビア語アッサラフ・アッサーリフ(良き先達:具体的には使徒ムハンマドとその教友)の思想と行動を理想とする主義であり、その信奉者は、このそれをさまざまなレベルで実現することをめざしている。具体例として、ターリバーン、IS(イスラミック・ステイト)など、イスラーム国家樹立をめざすサラフィー・ジハーディーに触れることが求められる。

現代日本メディア・ジェンダー研究講座

課題
出題の意図

日本の雑誌が、どのようにジェンダーに関する現象や人々のジェンダーについての考えに影響を与えているのか、ジェンダーと雑誌がどのように関連しているのか、知識と学術的な視点から論じる能力を問う問題です。また、雑誌という身近なトピックに対して、ジェンダーに関して受験生がどのような問題意識を持っているのかを問う問題です。

日本宗教・思想史研究講座

課題
出題の意図

近現代日本において、「日本的」「日本精神」「日本性」といった概念が、宗教を理解し語るための枠組みとしてどのように用いられてきたのかを考察することを求める問題である。受験者には、日本の宗教者や知識人による具体的な言説や実践の事例を先行研究に基づいて提示し、宗教と「日本的」という概念がいかに結びつけられてきたのかを歴史的文脈の中で論理的に検討する力が求められる。これにより、近現代日本の宗教思想に対する理解に加え、概念史的な視点から学術的に検証・考察する能力を評価することを意図している。

国際政治経済論講座

課題
出題の意図
  • 課題1:循環経済社会におけるリサイクル協力行動について、行動経済学的および社会学的な観点から正確に理解しているかどうかを確認することを目的としていました。さらに、リサイクル協力行動を分析する際に、どのようなデータを収集すべきかを適切に把握しているかを確認する意図も含まれていました。
  • 課題2:戦後のフランスにとって最大の問題の一つであったアルジェリア独立が、フランスの国内政治・社会と国際関係に与えた影響をどのように理解しているか確認する目的がありました。この問題は従来フランス外交史の文脈で分析されてきたので、これをいかに国際的な文脈で論じることができるか確認する意図もありました。
  • 課題3:効率性を低下させる外部不経済と,その対策について基本的な理解を確認する意図がありました。また、実社会における応用例を基に、実践上の課題を発見する能力と,その解決策について論じる能力を確認する意図がありました。

国際環境資源政策論講座

課題
出題の意図
  • 課題A:この問題は、応用社会心理学分野の研究遂行に必要な統計分析の基礎知識の理解度と、社会的ジレンマにおいてリーダーシップが協力行動に与える影響について具体的かつ論理的に説明する力を問うている。これにより、公共問題に関する協力行動について、修士のレベルにふさわしい研究を進めるために必要な基礎知識と論理的思考力について、総合的に評価することを意図している。
  • 課題B:防災政策は各国もしくは地域でその特性、文化、歴史、地理、経済などを考慮して検討・策定されるべきであり、特定のモデルを全てに当てはめるべきではない。そうした視点をもっているかどうかを確認するための課題である。また、日本は比較的防災対策が進んでいるため、様々な事例の特定が可能であるが、特に途上国では防災対策が実践されている場合も少なく、より調査に時間をかけてその国の防災対策を探し、その状況や課題を見出すことが重要であるため課題とした。
  • 課題C:従来、数理モデルを重視する経済分析はテキストデータを対象とすることを苦手としてきたが、大規模言語モデル(LLMs: Large language models)の急速な発展はこうした状況を一変しつつある。本問題は、こうした状況の変化について、具体例を挙げながら説明することを求めている。回答するためには、経済社会において実際にテキストがどのように用いられているかについての深い洞察と、経済分析やLLMsの手法についての基礎的な知識を前提としつつ、これらを統合しながら独自の分析を行うことが必要となる。

多文化共生論講座

課題
出題の意図

現在、イタリアのヴェネツィア、スペインのバルセロナ、日本の京都など、世界各地でオーバーツーリズムが問題になっており、問題解決のために、観光客の数自体を制限する策や、観光客と地元住民の動線を分離する策などが出されている。オーバーツーリズム問題は数の問題だけでなく、外国人観光客と地元住民の間の文化・習慣の齟齬が原因となっている事例も多いため、多文化共生論の立場から、オーバーツーリズムの具体的事例を紹介、考察させ、異文化間の摩擦や共生に関する知識や分析能力を評価する。

言語科学研究講座

課題
出題の意図
本課題は、受験者が修士論文を執筆し、博士課程前期2年の課程を修了するに足る基礎的な研究能力を有するかどうかを判断することを目的としています。課題の回答には、
  • 言語科学研究における諸分野の基礎知識があるか、
  • 学術論文を読みこなすことができているか、
  • 論文を批判的に分析・評価することができているか、
の三点が十分に示されていることが必要です。また、回答の文章が論理的で明晰であることも求められます。 なお、トピックは、理論言語学、応用言語学をはじめ、言語学の隣接分野から幅広く、講座所属の教員が責任を持って指導できる分野から選ばれています。

応用言語研究講座

課題
出題の意図

第二言語習得研究において重要な要因である個人差と環境の役割についての理解を確認する問題でした。具体的には、学習開始年齢(例:早期 vs. 後期)と学習環境(例:ESL vs. EFL)といった要因が特定の第二言語側面(例:発音)習得に与える影響について、先行研究を参照しながら論理的に考察する能力を問うものでした。着目するポイントとして、ただの先行研究の要約や紹介にとどまらず、例として臨界期仮説(もしくは敏感期)や学習速度の違いなどにも触れながら、対象となる言語側面の習得への影響を多角的な視点から議論を展開することが求められました。

博士課程後期3年の課程

ヨーロッパ・アメリカ研究講座

課題
出題の意図

本設問は、第二次世界大戦後における米国の対日ソフトパワー戦略が日米関係の再構築および維持にいかなる役割を果たしてきたのかを論じる能力を問うものです。軍事力や経済力とは異なる影響力の行使に着目し、その具体的手段と効果を歴史的事例と結びつけて論じられているか、また、アメリカ側の戦略にとどまらず、日本社会におけるソフトパワーの受容過程にも目を向け、日米関係を相互作用の過程として捉えられているかを重視します。

アジア・アフリカ研究講座1

※勝山教授の指導を希望する方向け

課題
出題の意図

中国史において史実と伝承・伝説を区別することが、長く重要な方法論的課題であった点を理解しているかを確認することにある。あわせて、歴代の学者が文献批判や考証学などの方法を用いて、この問題にどのように取り組んできたのかを、歴史的な流れとして説明できるかを問うている。また代表的な人物と著作を挙げ、その史料観や実証的姿勢に基づく史実認識を具体的に述べることで、中国史学を知的営為として捉える力を測ることを意図している。

アジア・アフリカ研究講座2

※大河原教授、朱准教授、木村准教授の指導を希望する方向け

課題
出題の意図
  • 己酉約条は1609年に朝鮮と対馬の間で取り交わされた取り決めであり、壬辰戦争後の朝鮮・日本の間での断絶に終止符を打つ重要な通交規定である。限られた字数内で、朝鮮と対馬との関係や己酉約条の歴史的背景・意義などを総合的に論じ、分析する能力が求められる。
  • 北清事変は世紀転換期に起きた重大な出来事であり、20世紀の国際関係に大きな影響を及ぼしたものである。限られた字数内で、事変に至った原因や経過、各国間の関係、内外の影響などをまとめる能力を考察する。課題提出型の入試において、とりわけ情報を整理し、多方面から分析する能力が求められる。この点がポイントとなる。
  • 現代中東における国家体制は、君主制と共和制に分けることが可能だが、特に共和制国家において顕著な政体として権威主義(Authoritarianism)体制をあげることができる。特に軍人出身の国家元首が、軍や与党ほかの権力を集中的に支配する体制を言う。選挙や議会、野党など、民主主義的と言える制度を備えてはいるが、実際には政権の権力をチェックして制限するようには機能していない。2011年「アラブの春」において、激しい抗議運動が発生し、政権交代につながったチュニジア、イェメン、エジプト、シリアなどの具体例をあげることが求められる。

現代日本メディア・ジェンダー研究講座

課題
出題の意図

経済政策が、どのように人々の生活と結びついているのか、ジェンダーに関する政策が現代日本社会にどのような影響を与えているのかを含め、論述する能力を問う問題です。また、その政策に内在する論点を論じることにより、社会の方向性を分析する能力も問います。一つの現象に対して、広い視野を持ち、多角的に影響関係を分析できるか、多様な視点から物事をとらえられているかを問う問題です。

日本宗教・思想史研究講座

課題
出題の意図

日本の歴史叙述において、「戦前」と「戦後」という区分がいかに形成され、どのような前提や含意のもとで用いられてきたのかを批判的に検討することを求める問題である。受験者には、特定の分野に限定されない広い視野から、歴史叙述における時代区分の機能や問題点を捉え、日本の歴史認識やhistoriographyに関する先行研究を踏まえつつ、論理的に議論を展開する力が求められる。これにより、歴史叙述の枠組みそのものを相対化し、その成立条件や影響を学術的に考察する能力を評価することを意図している。

国際政治経済論講座

課題
出題の意図
  • 課題1:地域研究分野における基本的なフィールドワーク手法を理解しているかどうかを確認する意図がありました。また、カーボンニュートラルと循環経済の概念および定義を正確に把握し、両者の相互関係について説明できるかを確認することも目的としていました。
  • 課題2:いわゆる湾岸戦争を単に中東の文脈だけではなく、世界政治全体の文脈で捉える分析能力を確認する意図がありました。また、この戦争は冷戦終焉期に発生したので、この時代の転換点という文脈を考慮して分析を進める能力があることを確認する目的もありました。
  • 課題3:課題3-1)、3-2)では、構造物の劣化と補修工事の評価について基本的な分析方法の理解を確認する問題でした。課題3-3)では、現実社会で起きている問題への関心と、現状の制約をふまえながら有効な維持管理策について論理的に考察する能力を確認する意図がありました。

国際環境資源政策論講座

課題
出題の意図
  • 課題A: この問題は、都市・交通分野における応用心理学研究の研究遂行に必要な基礎知識の理解度と、専門的な心理学の現象について具体的かつ論理的に説明する力を問うている。特に、後者では心理学の基礎的知識を用いて現象を読み解き,それを論理的に説明する能力を評価する。これにより、心理学アプローチを用いて公共問題に関する研究を行う際に,博士のレベルにふさわしい水準で研究を進めるために必要な基礎知識と論理的思考力について、総合的に評価することを意図している。
  • 課題B(1):仙台防災枠組の実現はあらゆる国の防災戦略の要であり、その実現のため、特に、科学技術の重要性が強調されている。しかしながら、その発展には課題も多く、先進国と途上国との達成のギャップは大きい。こうした背景を理解し、いかに科学技術が防災枠組実現に貢献できるかについて考慮し、その課題について論じることは災害科学研究を探求するには重要である。
    課題B(2): まずは、防災枠組の国の防災戦略の柱とすることの重要性、さらにそれらが実際の各国の防災対策にいかに反映されているかを問う課題である。防災枠組の実現は特に途上国にとっては容易ではなく、国の特性によって防災対策の実現が非常に困難な場合もあり、その原因を検討し、解決策を提示することが将来の防災枠組実現には不可欠である。こうした点を問う課題となっている。
  • 課題C:大規模言語モデルの急速な発展により、生成エージェントは外部ツールや集合的推論を駆使して、自律的に情報収集や考察、計画の立案や実行を担うことができるようになってきている。こうしたエージェントが消費者や生産者の経済活動を補助ないし代替した場合、その影響は市場支配力、産業構造、技術発展など広く経済社会全般に及ぶと考えられる。本問題では、人間とは異なるエージェントの特性や経済社会への影響について、経済学的な視点から説明することを求めている。回答するためには、生成エージェントについての基礎的な知識を前提としつつ、消費者理論や産業組織論についての深い理解をもって独自の分析を行うことが必要となる。

多文化共生論講座

課題
出題の意図

多文化共生という概念はその内実を抜きに肯定的なイメージで語られることが多いが、実際には多義的な概念である。生物界にも課題文のような「相利共生」のケースがあると同時に、たんに異種の生物が同じ空間を相互の干渉なしに利用するような「棲み分け」のケースもある。本課題は、回答者がこうした共生概念の多義性を理解しつつ、人間社会の具体的な事例の検討を通じて、求められる共生の在り方を自ら考察し、関連する諸問題を洞察し、論理的に展開する力を測るものである。

言語科学研究講座

課題
出題の意図
本課題は、受験者が博士論文を執筆し、博士課程後期3年の課程を修了するに足る高い研究能力を有するかどうかを判断することを目的としています。課題の回答には、
  • 言語科学研究における諸分野の高度な知識があるか、
  • 学術論文を精確に読みこなし、論点を的確かつ簡潔に要約することができているか、
  • 論文を客観化かつ批判的に分析・評価することができているか、
の三点が十分に示されていることが必要です。また、回答の文章が論理的で明晰であることも求められます。
なお、トピックは講座所属の教員が責任を持って指導できる分野から選ばれています。

応用言語研究講座

課題
出題の意図

第二言語習得研究における重要な理論と習得・学習についての理解を確認する問題でした。具体的には、第二言語習得に関する理論(例:noticing hypothesis, skill acquisition theory)をもとに、第二言語音声の習得や学習をどのように説明できるか、先行研究を参照しながら論理的に考察する能力を問うものでした。着目するポイントとして、ただの先行研究の要約や紹介にとどまらず、第二言語音声の習得・学習を促進もしくは阻害する要因や現象について、多角的な視点から議論を展開することが求められました。

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