入試課題及び出題の意図の公表
入試の課題とその出題の意図について、公表しています。
令和7年度(2025年度)入試
(掲載期間:2025年5月12日~2026年3月31日)
博士課程前期2年の課程
ヨーロッパ・アメリカ研究講座
- 課題
- 出題の意図
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本課題は、ヨーロッパ・アメリカ研究に関する基本的な知識、研究調査能力、議論を論理的に展開する能力を測ることを目的としています。いずれのテーマも、その学術的背景を調査した上で、いかなる問いを設定し、議論を展開するか、が肝要となります。各テーマの出題の狙いは以下の通りです。
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- 視覚による表象に非言語的表象である音楽がいかに寄与しているか、という映画研究上の基本的な問いに答えられるか。
- 議論が拡散しないよう文学と身体の関係を適切に定義づけて論じられるか。
- 人民の武器所有を認める米国において暴力の持つ意味を被治者の観点から論じることができるか。
- 考察対象となる地域と時代を定めて具体例を論拠に論じられるか。
アジア・アフリカ研究講座1
- 課題
- 出題の意図
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課題では、国際文化研究に必要な、自由な発想と多角的な視点を問うことを目的としました。また各個人が設定したテーマに沿って、どのような論理的思考能力や合理的な物事の考え方ができるのかを問いました。また今後アジア・アフリカ研究に取り組む上で、何が問題が課題となるのかを推察し、わかりやすく表現する力が問われる問題でもあります。
アジア・アフリカ研究講座2
- 課題
- 出題の意図
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- 明治維新によって急速に近代化を実現した日本に多くの清朝留学生が留学しに来た。同郷会を中心に『浙江潮』・『江蘇』などの雑誌が創刊された。清末中国人日本留学史をどれだけ把握しているのか、雑誌というメディアが革命の宣伝にどのような役割を果たしたのか、愛郷から愛国にまで拡大されたナショナリズムが具体的にどのような様相を呈していたのか、さらに、それが日中関係にどのような影響を及ぼしていたのか、などが本題の考察ポイントである。
- 本問題では明清交替という王朝交替について総合的に論じさせることで、中国史に対する基本的な知識を持ち合わせているかを問う問題です。基本的な経緯を説明できるだけではなく、それに伴い政治・社会・文化面などでどのような変化が起こったのかまで視野に入れ、説明する能力が問われます。
- イスラーム圏において、奴隷軍人が軍事的、政治的、社会的、経済的に大きな影響力を持った時代がありました。その歴史的位置づけを的確に理解できているかを問う問題です。アラビア語の呼称(グラーム、マムルーク)の意味、主たる民族構成の変遷(トルコ系から黒人系、チェルケス系)、君主の親衛部隊から各地に国家(インドの奴隷王朝、エジプトのマムルーク朝など)を形成するまでに至った経緯を説明することが求められています。8世紀から14世紀に時代を限定しているため、オスマン帝国におけるカプクルへの言及は求められていません。
現代日本メディア・ジェンダー研究講座
- 課題
- 出題の意図
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日本の教育が、どのようにジェンダーに関する現象や人々のジェンダーについての考えに影響を与えているのか、ジェンダーと教育がどのように関連しているのか、知識と学術的な視点から論じる能力を問う問題です。また、教育という身近なテーマに、ジェンダーに関して受験生がどのような問題意識を持っているのかを問う問題です。
日本宗教・思想史研究講座
- 課題
- 出題の意図
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近代日本において「美術」という新たな概念が定着する過程で、仏教がどのように再解釈されたのかを考察することを求める問題である。受験者には、先行研究に基づく具体的な事例の提示と論理的な考察を通じて、近代仏教史の理解や学術的な検証能力を示すことが求められる。これにより、歴史的文脈を踏まえた総合的な思考力の養成を重視している。
国際政治経済論講座
- 課題
- 出題の意図
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- 課題1.この問題は、社会工学研究に欠かせない、社会調査に関する基礎知識を確認する問題である。また、環境学及び行動経済学の事例分析、修士論文作成のためのデータ収集と分析方法をどの程度理解しているかを確認する意図がある。
- 課題2.最も基本的な冷戦概念の一つである「封じ込め」という用語を使いながら、冷戦構造の形成期について、受験者の理解度を問うことを目的とした。ヨーロッパにおける軍事同盟形成の過程は、ヨーロッパ以外を対象とする冷戦史研究においても必須であり、受験者の学力を見極めるのに有益だと考えて出題した。
- 課題3.設問1,2では最小二乗法の手順を理解し,推定結果を導き出した上で,その統計的な有意性を議論できるかが問われています.設問3では,与えられたデータから調査対象となった地域の特性を読み取り,求めた推定結果を基に地域特性に応じた政策を論じることが求められています.
- 課題4.国際政治経済論の観点から貿易協定交渉の特徴を問う課題です。多国間貿易協定と2国間貿易協定における交渉内容にはどのような違いが生じるのか、政策決定過程、勢力均衡論、覇権安定論、グローバル・ガバナンス論、ゲーム理論などに着目し、具体的には環太平洋パートナーシップ協定(TPP)・環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)と日米貿易協定、地域的な包括的経済連携(RCEP)と日中(韓)貿易協定交渉などを比較分析することで論じることができるでしょう。
国際環境資源政策論講座
- 課題
- 出題の意図
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- 課題A:この問題は、公共問題における行動研究において注目を集めている概念である「ナッジ理論」の理解と、社会的ジレンマの状況において協力行動が促される仕組みを具体的かつ論理的に説明する力を問うている。これにより、公共問題に関する協力行動研究における最新の研究トピックへの関心、基礎的知識の理解度、そして、この領域で修士のレベルにふさわしい研究を進めるために必要な論理的思考力について、総合的に評価することを意図している。
- 課題B:この問題は、生産に伴って外部費用が発生する環境下において、市場均衡が経済の効率性を損なう「市場の失敗」が生じるメカニズムについての理解を問うものである。回答にあたっては、基本的なミクロ経済学の部分均衡モデルについての理解を前提として、市場均衡生産量と社会的に最適な生産量を正しく求めて比較することに加え、政策介入(ピグー税)を経済モデルの中でどのように表現するのかについての考察が求められる。
- 課題C:この問題は、現在、防災分野において重要課題と考えられている防災における「科学技術の役割」に関する基礎知識を問うものである。回答については、効果があると考えられている科学技術を用いた防災対策について説明することを前提としている。さらに、気候変動やインクルーシブ防災など今後、特に力をいれる防災分野について、その課題と背景についての説明が求められている。回答に当たっては、気候変動の災害への影響を明確にし、さらにインクルーシブ防災の理解とその実践についての考察が求められている。
多文化共生論講座
- 課題
- 出題の意図
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歴史的経験と、それによって生まれた思想や文化は、現代の異文化間で生じる諸問題を考察するうえで重要な示唆を与える。本課題では、過去と現代の連続性を意識しながら、歴史の中で形成された思想や文化的表現が現代社会にどのような教訓や示唆を与えるかを考察することを求めている。本課題は、これまでの歴史の中で培われた価値観や思考の体系を、現代の社会的課題や人間の営みと関連づけ、批判的視点をもって検討し、それらがどのように応用可能であるかを具体的に論じる力をはかるものである。
言語科学研究講座
- 課題
- 出題の意図
- 本課題は、受験者が修士論文を執筆し、博士課程前期2年の課程を修了するに足る基礎的な研究能力を有するかどうかを判断することを目的としています。課題の回答には、
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- 言語科学研究における諸分野の基礎知識があるか、
- 学術論文を読みこなすことができているか、
- 論文を批判的に評価することができているか、
- の三点が十分に示されていることが必要です。また、回答の文章が論理的で明晰であることも求められます。なお、トピックは講座所属の教員が責任を持って指導できる分野から選ばれています。
応用言語研究講座
- 課題
- 出題の意図
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第二言語習得研究における重要な要因の一つである情意個人差の役割についての理解を確認する問題でした。具体的には、動機付けや学習不安といった個人差が第二言語習得に与える影響について、先行研究を参照しながら論理的に考察する能力を問うものでした。ただし、内容は上記二つの要因に限らなくてもよいです。着目するポイントとして、ただの先行研究の要約や個人差要因の紹介にとどまらず、情意個人差要因の役割の変化について、対象となる言語知識や能力(例:語彙、文法、リーディング、スピーキング等)、学習環境の違いなど多角的な視点から議論を展開することが求められました。
博士課程後期3年の課程
ヨーロッパ・アメリカ研究講座
- 課題
- 出題の意図
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アメリカ合衆国は万人の自由を謳って建国されましたが、その後の歴史において実際に自由を享受できたのは特定の存在であり、その自由はつねに他者の自由を制約することで実現していました。すなわち、白人、男性、資本家はそれぞれ黒人、女性、労働者の権利を制約することで自らの権利を享受することができたのです。アメリカ的自由に内在する以上のようなパラドキシカルな特質を具体的な事実をあげながら論じることができるかどうかをみる問題でした。
アジア・アフリカ研究講座1
- 課題
- 出題の意図
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課題では、吉川幸次郎の『中国の知恵』の一節を紹介し、中国古代における歴史編纂と認識とそれに対する孔子の見解、そしてその孔子の見解に対する伊藤仁斎のコメントを題材として出題しました。これもアジア・アフリカ研究に必要な学際的な思考と(中国と日本にまたがる)多角的な視点を問うことを目的としました。問われた課題に関する個々人の見解を問うことで、受験者の論理的思考能力を問いました。回答内容から今後アジア・アフリカ研究に取り組む上での学識についても問う問題でもあります。
アジア・アフリカ研究講座2
- 課題
- 出題の意図
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- 清末の二大新聞は梁啓超らに代表される維新派の『新民叢報』と章炳麟らに代表される革命派の『民報』であり、両者は紙面で大きな論争を起こしたことがある。本題は『民報』に焦点をあて、その創刊の時代背景、発行の状況、代表的な論者と主張、清末における維新派と革命派の対立状況に重点を置いて考察する。
- 朝鮮が明清中国に対して送った使節である「燕行使」についての知識を問う問題です。その用語についてや、使節が送られた背景、政治的・文化的意義、使節の残した燕行録などを総合的に説明する能力が問われます。
- アッバース朝初期に、イスラームにおけるアラブ人の優位に異を唱え、アラブ人と非アラブ人の平等を主張した文化運動であるシュウービーヤ運動の定義と歴史的意義を適確に説明できるかを問う問題です。シュウービーヤの典拠となったクルアーン(49章13節)のシュウーブ(諸民族)の意味、血縁よりも信仰重視のハワーリジュ派、非アラブ系改宗者の庇護民(マワーリー)、特にペルシア系官僚が展開したペルシア文化の優越性の主張がこの運動に与えた影響を論じ、さらに、この運動への対抗のために、アラブ人がアラブ人文学を確立するに至った経緯を論述することが求められています。
現代日本メディア・ジェンダー研究講座
- 課題
- 出題の意図
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文化の接触や文化の伝播という多面的で複雑な要素を持つ現象を、メディア論の視点から、各自の関心に基づいて学術的に論じる能力を問う問題です。メディアと文化の相互的な影響関係を論じる能力も問います。一つの現象に対して、広い視野を持ち、多角的に影響関係を分析できるか、多様な視点から物事をとらえられているかを問う問題です。
日本宗教・思想史研究講座
- 課題
- 出題の意図
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近現代日本におけるマルクス主義の受容と、その唯物史観が知識人の思想形成に与えた影響を考察することを求める問題である。受験者には、先行研究を踏まえた具体的な事例を示し、20世紀の思想史において唯物史観が果たした役割を論じる力が求められる。これにより、日本思想史の理解や学術的な分析能力を評価することを意図している。
国際政治経済論講座
- 課題
- 出題の意図
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- 課題1.この問題は、地球規模課題としての廃プラスチック問題を、分野横断的な学問領域としてどのように理解しているのかを把握するための問いである。特に、国際関係、環境科学、政策科学、環境経済学の観点から地球規模の環境問題を如何に解決すべきかについて、論理的な説明ができるかを確認する意図がある。
- 課題2.1970年代前半に、日本外交は沖縄返還や日中国交正常化といった非常に大きな転換点を迎えた。本来これらは戦後国際政治史および冷戦史上の文脈に位置付けられるべきだが、教科書的な説明では、日米関係および日中関係という二国間交渉の枠で議論される傾向がある。出題の意図は、後期3年の課程を目指す受験者に、こうした巨視的な見方に基づいて戦後日本外交史上の重大事件を分析できるかを問うことにある。
- 課題3.設問3-1においては,ゴミ処理場の建設を例として,環境政策の実施が地域にもたらした影響を評価する上で,その政策の因果効果を統計的に推定するために適切な方法を選択できるかを問う問題です.設問3-2においては,実際に研究を進めることを想定し,設問3-1で選択した推定方法に応じて適切なデータが収集できるか,を問い,分析方法への理解を確認するだけでなく,どのような仮説の検証を想定しているか説明がなされることによって,環境政策への理解・関心を問う問題です.
- 課題4.パブリック・ディプロマシー(公共外交・文化外交)について、国家と民間のアプローチの齟齬と相互作用を、国際政治コミュニケーション論から問う課題です。その主体・対象・手法について、その背景と問題点について整理することが必要です。具体的には、国家主体から企業やNGOや個人の非国家主体まで、相手国の市民対象なのか第三国の市民対象なのか、自国の市民対象なのか、伝統的な公的広報からメディアや文化作品を通した民間広報、昨今のSNSにおける市民の活動まで扱うことができるでしょう。
国際環境資源政策論講座
- 課題
- 出題の意図
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- 課題A:この問題は、社会的ジレンマ状況における個人の意思決定や行動選択のメカニズムを、理論的枠組みを用いて分析・説明する能力を問う問題である。(1)は、個人が他者の影響を受けない場合でも、協力行動や非協力行動が生じる過程を論理的に説明できる能力を問うている。(2)は、ソーシャル・キャピタルが協力行動に与える影響を考慮しつつ、社会的ジレンマ状況における個人の行動変化を分析する能力を問うている。(3)は、高いソーシャル・キャピタルが負の影響を及ぼす可能性を理解し、それが個人の態度や行動に及ぼす影響を考察する力を問う問題である。いずれの問題も、公共問題における個人の行動を研究するために必要な基礎知識とそれに関わる論理的説明力を問うものである。
- 課題B:この問題は、労働者の能力(タイプ)について企業と労働者の間に情報の非対称性がある状況において、労働市場における教育のシグナリング機能について考察する問題である。ここでは、教育を受けること自体は労働者の能力に影響しないが、教育水準を賃金体系に適切に組み込むことによって、労働者側は企業に自らの能力についてのシグナルを送ることができ、また、企業側は労働者の能力を判別することができる。特に(2)は、こうした賃金体系のあり方を問う問題である。
多文化共生論講座
- 課題
- 出題の意図
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本課題は、多文化共生論の視点から、社会において異質なものが受け入れられにくくなる本質的な要因を、具体的な事例とともに論じることを求めている。特に、グローバル化が進む現代社会において、文化的多様性の受容が求められる一方で、ナショナリズムや排外主義の台頭が顕著になっている。こうした実態をふまえ、本課題は、歴史的事例や現代の社会問題を取り上げながら、不寛容な社会がどのように形成されるのかを考察し、その要因を分析する力をはかるものである。
言語科学研究講座
- 課題
- 出題の意図
- 本課題は、受験者が博士論文を執筆し、博士課程後期3年の課程を修了するに足る高い研究能力を有するかどうかを判断することを目的としています。課題の回答には、
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- 言語科学研究における諸分野の高度な知識があるか、
- 学術論文を読みこなし、論点を的確かつ簡潔に要約することができているか、
- 論文を客観的かつ批判的に評価することができているか、
- の三点が十分に示されていることが必要です。また、回答の文章が論理的で明晰であることも求められます。なお、トピックは講座所属の教員が責任を持って指導できる分野から選ばれています。
応用言語研究講座
- 課題
- 出題の意図
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第二言語習得研究における重要な要因の一つである認知個人差の役割についての理解を確認する問題でした。具体的には、言語適性やワーキングメモリーといった個人差が第二言語習得に与える影響について、先行研究を参照しながら論理的に考察する能力を問うものでした。ただし、内容は上記二つの要因に限らなくてもよいです。着目するポイントとして、ただの先行研究の要約や個人差要因の紹介にとどまらず、認知個人差要因の役割の変化について、対象となる言語知識(例:語彙、文法、リーディング、スピーキング等)・学習者の外国語熟達度・学習環境の違いなどを考慮して多角的な視点から議論を展開することが求められました。