第30回 公開講座「国際文化基礎講座」(11月2日開催)
国際関係における理念とその行方ーー アメリカの過去と現在か ら
チラシ (クリックすると拡大します) PDF版は<こちら>
日 時 :2024年11月2日(土)13:00~16:30
実施形態:オンライン(Zoomにて開催)
対 象 :どなたでも参加いただけます。
参加料 :無 料
お申込み方法:以下の申し込みフォームから2024年10月25日(金)までにお申し込みください。
申し込みフォーム
開催日前日までにZoomのURLならびに講義資料のダウンロードについてご案内します。
※紙での資料送付を希望される方は、返信用封筒(角2サイズの封筒のあて名に「送付先住所・氏名」を記載し、320円切手を貼付)を、2024年10月21日(月)までに下記問合せ先宛にお送りください。またその際、封筒の表に赤字で「公開講座資料送付希望」と記載願います。
問合せ先
東北大学大学院国際文化研究科教務係
〒980-8576 仙台市青葉区川内41番地
E-mail int-kkdk*grp.tohoku.ac.jp (*を@に変換してください。)
プログラム
2024年11月2日(土)
13:00~ 開講式(研究科長より開講のご挨拶)
13:05~14:05 講義1
テーマ:「野蛮な異教徒」とアメリカ人――19世紀ハワイ王国におけるアメリカ人宣教師の言説
講 師:目黒 志帆美(東北大学国際文化研究科 准教授)
14:15~15:15 講義2
テーマ:アメリカ大統領選挙と国際秩序観――ハリス陣営とトランプ陣営を比較して
講 師:松本 明日香(東北大学国際文化研究科 講師)
15:30~16:30 ラウンドテーブル
それぞれのテーマについて、講師を交えて歓談をお楽しみください。
・国際文化基礎講座とは
・2024年度講義の要旨および講師の紹介
・これまでに開催された講座
主催 東北大学大学院国際文化研究科
国際文化基礎講座とは
目まぐるしく変動する国際情勢、いまだに混迷を続ける日本経済、21世紀に突入していよいよ抜本的な対応を迫られる環境・資源問題、多様な宗教や文化に起因する国家間・民族間の軋轢など、私たちは、身の回りの様々な問題に直面しています。これらに対処するためには深い洞察力が求められることは、いうまでもありません。
平成5(1993)年に大学院国際文化研究科は、諸外国の言語や文化、国際的な文化の交流の意義やそれに内在する諸問題を深く理解し、高度の専門的な知識を有する研究者や実務者を養成することを目的として設置されました。さらに、平成27(2015)年にはますます加速化するグローバル化に学術的に対応すべく、本研究科は国際文化研究専攻という1専攻のもとに、地域文化研究系、グローバル共生社会研究系、言語総合研究系という3つの教育プログラムの単位を組み込んだ教育研究体制へと改編することになりました。このそれぞれにおいては自文化をも相対化できる深い異文化理解、グローバルな諸問題の解決能力とリーダーシップの養成、高度なコミュニケーション能力の涵養を目指し、その基礎の上により高度な専門的知見と能力を培うことを目標としています。
市民の皆さま・地域の皆さまと問題意識を共有しながら、歴史を紐解きつつ、現代を、そして将来を見据えていきたいと思います。皆さまのご参加を心よりお待ちしております。
講義の要旨および講師の紹介
講義1
テーマ:「野蛮な異教徒」とアメリカ人―19世紀ハワイ王国におけるアメリカ人宣教師の言説
アメリカに併合される以前のハワイは、先住民の王を戴く独立王国でした。1820年以降ハワイで宣教活動を展開した福音主義のアメリカ人宣教師の影響下で進んだ文明化・キリスト教化によって、ハワイの社会は大きく変容しました。もともと土着信仰と身分制を特徴としていた伝統的ハワイ社会は、1840年以降、立憲君主制のもとハワイ国民すべての政治参加と私的財産の保有が保障される近代国家へと転身したのです。その一方で、ハワイの政治・経済的領域で段階的に権勢を拡大した宣教師とその子孫は、1893年にアメリカ海軍とともにクーデターを引き起こし、女王リリウオカラニを退位させることで、ハワイ王国はここに滅亡することになりました。したがって、アメリカへの併合に至るハワイの歴史は、宣教師勢力による支配の歴史とみなされます。
本講演では、1820年代のアメリカンボード宣教師団のハワイへの入植期に注目します。宣教師が残した記録から、当時の宣教師が母国アメリカと伝道地ハワイをいかに捉えていたのかを考えてみたいと思います。19世紀ハワイ史研究の視座から、アメリカの対外政策理念をなす源流の一端を明らかにしたいと思います。
講 師:目黒 志帆美(東北大学大学院国際文化研究科 多文化共生論講座・准教授)
◆専門:19世紀ハワイ史
◆主要著書・論文:
『フラのハワイ王国史−王権と先住民文化の比較検証を通じた19世紀ハワイ史像』御茶の水書房、2020年
「ハワイ王国における二元統治体制-クヒナ・ヌイ制度の成立から廃止まで」 『歴史』 第126号、1-29頁、2016年4月
「ハワイ王国に写し出されるアメリカ-マーク・トウェインの『ハワイ通信』にみる『自国認識』」 『インターカルチュラル』 第16号、83-98頁、2018年3月
◆本研究科での担当授業科目:
多文化社会形成論I・Ⅱ、共生社会論
講義2
テーマ:アメリカ大統領選挙と国際秩序観–ハリス陣営とトランプ陣営を比較して–
2024年11月5日にアメリカ大統領選挙が行われる。アメリカは国内総生産(GDP)および安全保障費と共に、いまだ世界のトップを占め、その影響は国際社会に幅広く及ぶ。候補者両陣営の国際秩序観はどのようなものなのか。アメリカ国民はどのように捉えているのか。バイデン大統領の後継者のカマラ・ハリス副大統領とドナルド・トランプ元大統領の公約と政策から、その行方を見据える。
実質的な二大政党のアメリカで、今年は民主党・共和党それぞれ大統領経験者が候補に名乗り挙げ、ほぼ確定していたが、バイデン大統領が6月27日の討論会で苦戦し、かなり遅いタイミングでの撤退を7月21日に宣言した。直後には女性副大統領のハリスが後継なり、8月22日に米民主党党大会で大統領候補者指名を受諾した。バイデン政権は優秀なスタッフが主導し、世界保健機関(WHO)や世界貿易機関(WTO)、気候変動対策のパリ協定などの国際枠組みへの復帰や再取組み、インド太平洋経済枠組みや民主主義サミットの立ち上げなど、多国間協調にも積極的に取り組んできており、ハリスのサポートを継続する。
一方で、共和党の元大統領でもあるトランプ候補は、選挙戦と同時並行で各種司法判決に晒されていたが、7月13日のトランプ銃撃事件を受けて、生き残った英雄として支持率が跳ね上がった。ただし、「力による平和への回帰」を党要綱に据え、「アメリカ第一主義」を旗印に一期目以上の強硬な関税賦課や為替レートの調整を公約として掲げており、また複数の国際枠組みからの撤退可能性も取り沙汰されており、関係国に既に影響が出てきている。また、在任中は米朝会談やロシアのプーチン大統領との対談、中東の和平交渉を頻繁に行っていたため、泥沼化したウクライナ問題、イスラエル・パレスチナ問題への打開が方向性はさておき一部で期待されている。
(ワシントンDCにて講師撮影)
講 師:松本 明日香(東北大学大学院国際文化研究科 国際政治経済論講座)
◆専門:アメリカ政治・外交、国際関係
◆主要著書・論文:
「アメリカの通商摩擦と世界貿易機関(WTO)改革」『教養としてのアメリカ研究』大学教育出版、2021年
「米国の通商政策転換――オバマ政権からトランプ政権へ――」 経済産業研究所・京都大学『貿易、環境、エネルギーの国際制度形成に係る調査研究報告書』2020年、24-5
「アメリカ大統領選挙候補者の公約とアジアへの影響――バイデン陣営をトランプ政権と比較して」日本貿易振興機構アジア経済研究所web『世界を見る眼』2020年10月4日
◆本研究科での担当授業科目:
グローバル・ガバナンス論