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最近の研究成果

国際日本研究

欄日蓮はなぜ近代日本で人気を集めたのか?近代仏教研究の共同プロジェクト

発表のポイント

  • 近代化に伴って変化した仏教世界。
  • 近代科学思想、とりわけ進化論が宗教の世界に与えた影響。
  • 日蓮仏教は近代日本に人気を集めたのはなぜだろうか?日蓮信仰は近代化に伴いどう変化したのか?
  • 近代日本の軍事思想家が日蓮仏教に惹かれた思想的背景。
  • 女性信仰者の日蓮信仰観。

概要

宗教は時代の変化に伴い、変わるものです。日本では明治期から仏教も大きく変化しました。例えば、「在家」の仏教者が非常に数の多い仏教系の雑誌や書籍などを刊行し、近代の社会に仏教がどのような役割を果たすべきかについて議論しました。なお、近代科学思想とりわけ進化論が近代日本の宗教の世界に大きな感化を及ぼした。その「近代仏教」の流れの中で、日蓮仏教も大きく議論されるようになり、新しい日蓮系の在家運動や新しい日蓮仏教思想が現れ、人気を博しました。例えば、詩歌・童話の作者宮沢賢治、満州事変を計画した石原莞爾、社会主義者の妹尾義郎や、ジャーナリストの石橋湛山などが、日蓮仏教を唱えました。

日蓮信者が日蓮とナショナリズムを結びつけ、国家主義が高まった日清戦争と日露戦争期に日蓮宗は人気を集めました。しかし、ナショナリズムだけではなく、日蓮主義の世界的なビジョンやその「科学」的な合理性など、人々は様々な理由で日蓮仏教に惹かれました。このような観点から日蓮主義を根本的に再検討するため、私は2019年から大型プロジェクト、科研基盤研究(B)「越境する日蓮主義の基礎研究――トランスナショナル・ジェンダー・スピリチュアリティ」の代表を務め、研究を推進しています。

近代仏教史は、従来男性を中心に叙述されてきましたが、多くの女性が日蓮仏教に惹かれており、その中には日蓮仏教に基づいた女性解放を唱えた女性もいたという事実に着目しています。

日蓮仏教を通じて、さまざまな人がオルタナティブな近代世界を構想していた。

出版・公表など

著作・論文

  • ゴダール・クリントン『ダーウィン、仏教、神――近代日本の進化論と宗教 』(碧海寿広翻訳、人文書院、2020年)
  • ゴダール・クリントン「日蓮主義と日本主義との衝突――日中戦争期における東亜連盟運動」(石井公成監修、近藤俊太郎・名和達宣編『近代の仏教思想と日本主義』法藏館、2020年)
  • ゴダール・クリントン “Nichirenism, Utopianism, and Modernity: Rethinking Ishiwara Kanji’s East-Asia League Movement”(日蓮主義、ユートピア、近代――石原莞爾の東亜連盟運動・再考、Japanese Journal for Religious Studies, 42/2, 2015年)
  • ゴダール・クリントン “Future War and Future Peace after 1919: Ishiwara Kanji and the Imperial Japanese Army in the Wake of World War I,”(将来の戦争・未来の平和――石原莞爾と第一次戦争期の陸軍、 in Tosh Minohara and Evan Dawley, eds., Beyond Versailles: Reverberations of the “1919 Moment” in Asia, London: Lexington Books, 2020)
  • ゴダール・クリントン「ユートピアと帝国の狭間の共感――感情史から見た小泉菊枝の『満州人の少女』と日蓮主義」(2023年出版予定)
  • ゴダール・クリントン「海軍将校たちの観音信仰――小笠原長生、佐藤鉄太郎、東郷平八郎」(2024年出版予定)

発表・公開講座

  • ゴダール・クリントン「なぜ近代日本の戦略思想家は宗教に魅かれたのか?ーー佐藤鉄太郎と石原莞爾について」公開講座、仙台白百合女子大学、2023年1月17日
  • “The Dragon King’s Daughters: Women in the East-Asia League Movement (1939-1951),” European Association of Asian Studies, 25-28 August, 2021
  • “Lotus of Steel: Nichirenism in the Imperial Japanese Army and Navy,” Keynote speech, International Symposium on Japanese Studies, Thammasat University, Bangkok, February 2020.
  • “Religious Receptions of Darwinism in Modern Japan,” keynote speech at the Second East Asian Society for the Scientific Study of Religion (EASSR), July 27-28, 2019, Hokkaido University, Japan
  • “Aspiring to Singularity: Nichirenist hopes for the Unification of Space, Gender, and Mind,” panel Rising Lotus: Rethinking Nichirenism in Twentieth Century Japan and East-Asia, AAS-in- Asia, Bangkok. July 2019

 

問い合わせ先

Godart, Clinton(国際日本研究講座)

E-mail: godart [@] tohoku.ac.jp