研究スタッフ紹介

小原 豊志

 

「人種」が語るアメリカ合衆国の歴史―「白人」とは誰か―

地域文化研究系

ヨーロッパ・アメリカ研究講座

教授
博士(国際文化)

― 研究の内容を教えてください。

ニュースや映画、ドラマでしばしば話題になるように、アメリカ合衆国の歴史はどこを切りとっても「人種」の問題が顔をのぞかせます。自由と平等を高らかに謳って建国されたこの国で黒人奴隷制が存続したのはなぜなのでしょうか。また、奴隷解放を実現した南北戦争ののちに黒人差別制度が成立したのはなぜなのでしょうか。そして、現在でも黒人問題がアメリカ合衆国の大きな国内問題でありつづけているのはなぜなのでしょうか。こうした問題関心のもと、アメリカ民主主義と人種差別の関係を明らかにするために「白人性」という人種に関する概念に着目し、その形成・発展過程を歴史的に追究しています。

― その研究を始めたきっかけは何ですか。

アメリカの人種問題に関心をもったきっかけは、中学生のころに『ルーツ』という黒人奴隷制の歴史を描いたTVドラマを見たことです。同じ人間なのに、一方の人種が他方の人種の人格を無視して酷使するさまに、「アメリカ民主主義とは白人のためだけにあったのではないか」という素朴な疑問が芽生えました。その後、大学に入って本格的にアメリカ史を勉強するうちに、アメリカの人種問題を考えるには奴隷解放前後の時代を研究することが重要であると気づき、それ以降、現在にいたるまで19世紀の黒人と白人の人種関係史、とくに黒人から参政権などの権利を奪おうとした白人の意識や運動を分析し続けています。

― はじめに研究者を目指そうと思ったきっかけはどのようなことですか。

私は大学卒業間際まで高校の世界史の教師になるつもりでした。しかし、卒業論文を書き上げた達成感から、そして、それ以上に卒業論文提出後にわいてきた新たな疑問をどうしても解明したいという気持ちから、大学院への進学を希望しました。大学院での研究はけっして楽なものではありませんでしたが、それでも自分の疑問が一つ一つ明らかになって自分なりのアメリカ史像が作り上げられるようになると研究が面白くなり、研究者の道を進むことに決めました。

研究のキーワード

アメリカ民主主義、人種差別、白人性、奴隷解放、黒人市民権・選挙権

主な著書・論文など

共著
『西洋近代における分権的統合その歴史的課題 ―比較地域統合史研究に向けて―』(東北大学出版会、2013年)
単著論文
「ドアーの反乱」と黒人選挙権―アンテベラム期アメリカ合衆国における選挙権拡大闘争の一断面―」(東北大学『国際文化研究科論集』 第17号、2009年)
「南北戦争と黒人選挙権―軍務における白人性解体の観点から―」(『アメリカ史研究』 第34号、2011年)など

東北大学研究者紹介

https://www.r-info.tohoku.ac.jp/ja/c82d9001cba9525134b77f930440777c.html

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