研究スタッフ紹介

目黒 志帆美

 

ハワイの歴史から考える太平洋世界の力学

グローバル共生社会研究系

多文化共生論講座

准教授
博士(国際文化)(東北大学)

― 研究の内容を教えてください。

先住民の国王をいただくハワイ王国がいかにしてアメリカ合衆国の領土に組み込まれ、現代ハワイの楽園イメージはいかに形作られているか。これが、私の掲げる大きな問いです。これまでの研究では、ハワイの伝統舞踊であるフラとハワイ国王の権威(王権)との関係や、ハワイにキリスト教や西洋的価値観を持ち込んだアメリカ人宣教師のハワイ文化観、アメリカ人作家の小説に見る19世紀アメリカ人のハワイ観、ハワイ王国の政治制度、といったテーマを扱ってきました。現在は、ハワイ王国初の成文憲法制定の背景を研究するとともに、現代の日本におけるハワイ文化の受容にも関心を持っています。

― その研究を始めたきっかけは何ですか。

大学卒業後、私は地方のテレビ局で報道の仕事をしていました。入社6年目を過ぎた頃、仕事をこれ以上続けるのが難しい状況になり、思い詰めた時期がありました。そのときに出会ったのが、ハワイの舞踊フラでした。それがきっかけでハワイの歴史に関心を持ち、勉強してみたい、と思いました。そこで意を決して会社を退職し、この国際文化研究科の修士課程に入学したのが、研究との直接的な出会いです。 子供の頃の疑問は、なぜ西洋の文化は他よりも優位にあるのか、ということでした。幼少期からピアノを習っていた私は、なぜこれほどまでにピアノという楽器がもてはやされ、西洋音楽が音楽全体の規範になっているのか、不思議に思っていました。小学校5年生の頃(1980年代末)、NHK-FMで毎週日曜日の朝に放送されていた「世界の民族音楽」というラジオ番組がありました。そこで流れる中国少数民族の歌曲やイスラエルの民謡が非常に魅力的で、当時はカセットテープレコーダーでラジオ番組を録音しては、テープが擦り切れるほど何度も聴いていました。と同時に、これだけ魅力的な音楽なのになぜ西洋音楽と同等の扱いを受けていないのか、という素朴な疑問を持つようになります。やがて歴史を学ぶにつれて、西洋/非西洋の問題は自分にとってより深刻かつ具体性を帯びたものになっていきました。小学生の頃の感覚的な経験もまた、研究へ導くものだったのかもしれません。

研究のキーワード

文化・人の移動、文化触変、近代国家、太平洋世界、ハワイ史、アメリカ史

主な著書・論文など

【著書(単著)】
『フラのハワイ王国史』御茶の水書房、2020年。

【論文】
「アメリカ人宣教師のフラ観−1820年代のハワイ文化をめぐる言説とその意味」(『比較文化研究』第116号、177-187頁、2015年4月)
「ハワイ王国における二元的統治体制−クヒナ・ヌイ制度の成立から廃止まで」(『歴史』第126号、1-29頁、2016年4月)
「ハワイ王国に写し出されるアメリカーマーク・トウェインの『ハワイ通信』にみる『自国認識』」(『インターカルチュラル』日本国際文化学会、第16号、83-98頁、2018年3月)

東北大学研究者紹介

https://www.r-info.tohoku.ac.jp/ja/7cdb6caebb5d35ec41d3de7c424ce3f6.html

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