チュパカブラス ―ラテンアメリカにおける新たなる吸血鬼伝承―[1] 吉田栄人[2]
はじめに
吸血鬼伝説はおよそ世界中に分布する。ラテンアメリカとて例外ではない。メキシコ中央高地のトラスカラ州、プエブラ州あたりでは生後間もない乳児の血を吸うトラウェルプチtlahuelpuchiと呼ばれる魔女が報告されている(Nutini, Hugo G. & John M. Roberts 1993)。また南米アンデス地域では、血ではなく人間の脂肪[3]を抜き取るピシュタコpishtaco(ケチュア語)もしくはカリシリkharisiri(アイマラ語)と呼ばれる殺人鬼の存在が信じられている。これらの「吸血鬼」は通常は、社会の内部に住んでいる呪術的な能力を持った人間とされてきた。それゆえ、吸血鬼騒動は通常は魔女狩りにも似た吸血鬼狩りによって収束する。ところが、1995年プエルト・リコに出現し、マイアミやメキシコさらには南米へと活動場所を広げて行ったチュパカブラスchupacabrasと呼ばれる新種の吸血鬼は宇宙人のような姿をしているとされ、また多くの場合、吸血鬼狩りも行われることなく収束してしまった[4]。本論稿では、ラテンアメリカの伝統的な吸血鬼伝承から見ると多少異質とも言えるこのチュパカブラス伝説について紹介し、あわせてインターネットという新しいメディアにおける記号の生成と流通の可能性について考えてみよう。
チュパカブラスの生態
チュパカブラスは山羊や馬、鶏など主に家畜の生き血を吸うとされる。また、痕跡を残すことなく体内から臓器を抜き取ることもあるという[5]。人間がチュパカブラスに襲われたという報告もなくはないが、チュパカブラスは名前が示す通り基本的には家畜を襲う吸血鬼である。足跡などチュパカブラスのものとされる写真や、姿を見たという証言は後を絶たないが、チュパカブラスの姿や生態に関しては今のところ定説はない。そこでまずは、今までに報告されているチュパカブラスはどのようなものであるのか、その特徴を整理して置こう。 1997年1月17日にTBS系列で放映された「金曜テレビの星」のプエルト・リコ現地リポートでは、チュパカブラスは爬虫類のような背びれと2本の鋭い牙を持ち、2本足で歩く120センチメートル位の大きさの生物で、指は3本だったと報告している。チュパカブラスの目は赤く大きく、背中には背びれの他に羽根が付いていることもある(図2)。「金曜テレビの星」では全体に緑がかった配色を行なっていたが、皮膚は灰色がかっているともされる。また、体は硫黄臭を漂わせている。 未知の存在を理解したり、他人に説明しようとする際に、我々は既知のものを参照せざるを得ない。たとえば、1995年にプエルト・リコのカノーヴァナスで目撃された時には、「猿の一種かと思った。でも、正確には猿じゃない。猿のように走ったんだ。4フィート位の背丈でシッポはなかった」と、ある目撃者は語っている[6]。また、グアニカでチュパカブラスに襲われた人物は黒い毛の生えたゴリラのようだったと証言している[7]。チュパカブラスの容姿を説明するために、この他にも様々な動物が用いられている。カリフォルニア州ではこうもり[8]、プエルト・リコのエル・ユンケでは山羊[9]、メキシコでは七面鳥、カンガルー[10]、ヒョウ[11]のようだったと目撃者たちは証言している。
チュパカブラスを表象するのにどのようなたとえを使うかは、チュパカブラスを語る人たちの生活とそこから生み出されるコスモロジーと密接に結び付いているはずである。つまり、ある地域の人々にとって危機をもたらす可能性のあるものについてのローカルな知識とシンボリズムがチュパカブラス・イメージに色濃く反映されることになる。たとえば、家畜をコヨーテに襲われる危険のあるメキシコ北部の農村部において、チュパカブラスはコヨーテ[18]のようであると説明することは人々にとって説得的でありかつ恐怖心を強く喚起するものであるだろう。しかし、家畜など持たない都市の住民はこうした説明に対して特別な感情を抱かない。むしろ、都市住民は近代都市生活の基礎となっている科学の力では説明もつかない超常現象や人間の能力を超えた地球外生命体などと結び付けられた時により強い恐怖を感じるはずである。 チュパカブラスをめぐる騒ぎは、1995年8月プエルト・リコのカノーバナスで数百頭の家畜が襲われたことから、急速に広まった。しかし、プエルト・リコではこのチュパカブラスの出現以前の1970年代にもモカMocaの吸血鬼という名で呼ばれる吸血鬼騒動があった[19]。また、現地ジャーナリストのフーリオ・ラミーレス氏によると、25年程昔までは、家畜の血を吸う吸血鬼はel garabiadoという名で呼ばれていたという。つまり、プエルト・リコには家畜の血を吸う吸血鬼信仰がもともと存在し、それが風土病的に時折姿を現わすと考えられる。このプエルト・リコのローカルな吸血鬼伝承がたまたまインターネットが普及し初めた時期に再燃したことによって、チュパカブラスはアメリカ経由で世界中に広がって行った。それゆえに、チュパカブラスはインターネットを扱える社会階層のアメリカ人たちが抱く恐怖のシンボリズムを色濃く反映することになったのである。特に、ジャージー・デヴィル伝説など怪奇事件を扱ったX-ファイルやエイリアンをテーマとした様々な映画が与えた影響は大きい[20]。チュパカブラスはプエルト・リコに出現こそしたが、他の地域や国々に広がっていく過程で各地の世界観を反映して様々に変化して行ったのである。
チュパカブラスの正体 プエルト・リコに端を発した原因不明の家畜襲撃事件は、主として以上のように様々な形態をとるチュパカブラスという謎の生命体による仕業として語り継がれて行くこととなった[21]。この謎のチュパカブラスは一体どのような生命体であるのかという点に関しては、(1)未発見の新種・突然変異生物、(2)遺伝子操作による人工生物、(3)地球外生命体という3つの解釈が存在する[22]。 新種生物説は、自然破壊など生態系のバランスの崩壊に伴って、今まで人目に触れることのなかった未知の生物が人間の生活圏に姿を現わしたとする解釈である[23]。たとえば、メキシコ北部ではチュパカブラスは干ばつによって本来の獲物を捕ることができなくなったため、人里に出てきて家畜を襲うようになったのだと説明される。この新種生物説には未発見の生物が人前に姿を現わしたとする説に加えて、生態系の変化が既存の生物に遺伝学的な変化をもたらしたとするバリエーションも存在する。この遺伝学的変化が自然の力ではなく人の手によって引き起こされたとするのが、2番目の人工生物説である。この人工生物説は主としてプエルト・リコを中心に語られたものであるが、これはプエルト・リコにある米軍の基地内で何か秘密の実験が行なわれてきたのではないかという風説と結びついている。実際、1950年代にはプエルト・リコの女性を実験台にして経口避妊薬が開発されたり、ダイオキシン系化学薬品の実験やガンマ線の照射実験までもが行なわれていたという(並木 1996:104)。こうした過去の経緯からすれば、一般民間人が立ち入ることのできない米軍基地内において何らかの遺伝子操作の実験が行なわれており、そこからチュパカブラスという新たな生命体が作り出されたという噂が生じても不思議ではない。
そして、この地球外生命体説が今日でも最も有力であるのは、チュパカブラス伝説が農村部というよりはアメリカを中心とするインターネット空間で主に伝承されてきていることと無関係ではない。原因不明の家畜襲撃事件が途絶え、農村部ではチュパカブラス・パニックが収まり、日常生活からその記憶が薄れていく中でも、インターネット上のチュパカブラス伝承は蓄積され続けた。チュパカブラスは家畜の所有者によってではなく、主にコンピュータの所有者ないしは利用者によって語り継がれてきたのである。未発見の生物説や人工の新種生物説はかなり特定の地域に固有の社会的背景を持っており、世界中のコンピュータ・ユーザが共有できるエピソードではない。それに対して、地球外生命体という解釈の枠組みは誰とでも共有でき、またビデオなどによって容易に追体験ができるエピソードなのである。
チュパカブラス伝説の伝播 チュパカブラスはプエルト・リコの各地で家畜を襲った後、フロリダ半島に上陸し、テキサスやカリフォルニアなどを経て、1996年4月にはメキシコの各地で出没するようになる。チュパカブラスの目撃例はニューヨークやニュージャージーなど一部は米国北部にも広がって行くが、チュパカブラスのニュースは主としてスペイン語メディアを介して米国のヒスパニック系の人々、主にマイアミ、カリフォルニア、ニューメキシコなどに広まって行った[24]。特に、ラテンアメリカ諸国でも人気を博している米国マイアミのUnivision制作スペイン語テレビ・トークショー「クリスティーナ」でチュパカブラスが取り上げられたことが、チュパカブラスのスペイン語圏への拡大に一役買ったと言われる[25]。
チュパカブラスはスペインやロシア、ブラジルなどにも現われている。しかし、チュパカブラス騒動は数ヶ月後には沈静化し、人々の日常生活の場から忘れ去られていった。ところが一方で、チュパカブラスを扱うホームページは現在でも数知れず存在する。チュパカブラスはインターネットを主要な住み処としているのである。 チュパカブラス伝説がどのような経路で世界中に拡散していったのかを正確に知ることはできない。しかし、テレビなど従来の一方向的かつ一過型のメディア以上に、情報の流れが双方向的であるインターネットが重要な役割を果たしたことは確かである。インターネットは単に情報を伝達する媒体としてチュパカブラス伝説を配信したのではなく、チュパカブラス情報を集積し、また人々がそれに随時変形操作を加えていく場そのものでもあったはずである。それゆえに、チュパカブラスはインターネット空間に出没し続けることができるのだと言えよう。
チュパカブラスとラテンアメリカ的世界 チュパカブラス伝説は米国を基点として世界中に伝播したものではあっても、最初はスペイン語文化圏を中心に広まって行った。では、なぜチュパカブラス伝説はスペイン語文化圏、あるいはラテンアメリカ文化圏の人々の間に広く流布するに至ったのであろうか。そこにはやはりラテンアメリカ文化圏に特有の文化的背景というものを想定せざるを得ない。すなわち、チュパカブラス伝説を受け入れ易い文化的な素地がもともとあったと考えられる[27]。 米国のフォークロア研究家ジェームズ・グリフィスはこのラテンアメリカ人が持つ文化的特性を次のように解説している。「アングロ・アメリカ人の世界でも家畜が奇妙な殺され方をされることはある。そういう時、我々は往々にしてそれを悪魔的な信仰のようなもののせいにしてしまう。我々は我々の様でいて我々とは違う何かを思い浮べることで納得する。それに対して、メキシコ人やプエルト・リコ人にとっては、地球外生命体であるか否かは別として、不可思議な動物と結び付けることが自然の発想なのだと思う。」[28] グリフィスが言うラテンアメリカ人の発想とは、ラテンアメリカ文学が表現しようとしてきた魔術的リアリズムに根ざしたものと見ることができるかもしれない。つまり、ラテンアメリカにおいて人間を取り巻く自然がすでに魔術的なものであるとすれば、人間にとっての驚異・脅威はまず人間が共生する自然そのものの延長物として認識されるはずである[29]。ニュー・メキシコ州立大学人類学講師のクリスティーヌ・イーバーのように、現実とファンタジーが交錯する世界認識を背景として、ラテンアメリカの人々はさしたる疑問を抱くこともなく、チュパカブラスを語り戯れるのだとさえ主張することさえできるかもしれない[30]。 もちろん、冒頭で述べた伝統的な吸血鬼伝承がチュパカブラス伝説を受け入れる際の受け皿になった場合もあったはずである。しかしながら、伝統的な吸血鬼伝承とチュパカブラス伝説との間には語りそのものにおける、また吸血鬼騒動をめぐる人々の対応に大きな違いが見られる点に注意しなければならない。アンデス地域においてピシュタコ伝説が発動される時、それは共同体内の誰かが排除されることによってのみ収束する。あるいは、排除されないまでも、トラウェルプチのように共同体内の誰かが印付けられることによって、人々は差し迫った不安から解放される。ところが、チュパカブラスの場合にはこういった犯人の特定作業が行なわれないままに危機は過ぎ去ってしまった。 吸血鬼が特定される過程を差異化による一つの社会的なカタルシスとみなすならば、ラテンアメリカの伝統的な吸血鬼伝承は、共同体との関係において生成される「異人殺しのフォークロア」的な性格が強い[31]。すなわち、非道徳的な方法で私腹を肥やしたとみなされた者が、共同体の秩序を回復するために吸血鬼として共同体から排除される。共同体の資源が一定である限りにおいて、一方の経済的上昇は他方の犠牲の上にしか成り立たない。この意味で共同体内部における経済的上昇はまさに吸血行為に等しい。つまり、伝統的な吸血鬼伝説は基本的には妬みを核に持つゴシップとして共同体内部でのみ流通する。ところが、チュパカブラス伝説は多くの場合、共同体の外部において形成され、かつ去って行った噂であった。それは必ずしも共同体内部に蓄積された道徳的悪に根差したものではないという点で、吸血鬼狩りを行なう必要もあまりなかったのだと言えるのかも知れない。 もちろん、チュパカブラスが各共同体の悪と同一視される可能性がないわけではない。たとえば、サリナス・デ・ゴルタリはまさにメキシコ国民にとっての悪としてチュパカブラスに喩えられたのである。しかし、現在のところ、村落レベルにおいてチュパカブラスによる吸血鬼狩りが行なわれたという報告は見当たらない。おそらく、チュパカブラスが「異人殺しのフォークロア」として村落社会に取り込まれない限り、チュパカブラスは語ることだけを目的とした新たな都市伝説として人々の間に流通し続けるだけなのだろう。チュパカブラス伝説はラテンアメリカ的世界から解き放たれ、そこに付与される様々なメッセージがもはや「共同体」の価値規範に回収される必要のない民間伝承として世界中に流通し始めたのだと言えよう[32]。
インターネットにおけるチュパカブラス チュパカブラスは人々がある種のメッセージを込めた物語であると同時に、メッセージを伝達するための記号でもある。記号としてのチュパカブラスがどのように広まって行ったかはすでに述べたところである。しかし、チュパカブラスは記号でもあるがゆえに、上に述べたのとは違った読み方ないしは扱いがされることがある。すなわち、記号のユーザは自分が属す社会における意味の体系に従って記号を解読したり、新たなメッセージを作成したりする。たとえば、チュパカブラスのニュースが広がり始めた頃、メキシコでは当時の社会状況を反映して、国民を搾取しているとみなされる政治家たちをチュパカブラスと揶揄した。つまり、チュパカブラスは社会的な悪を示す記号として用いられたのである。こうした社会的文化的な意味付けはそれを用いる社会や時代に固有のものであり、その社会に所属するものでなければ、その意味を解読することは基本的にはできない。 ところが、チュパカブラス伝説はインターネットを中心に世界中に広まり、またチュパカブラスの恐怖に人々が実際に脅えた地域では、現在そうした社会現象があったことすらほとんど忘れ去られてしまっているにもかかわらず、インターネット上ではいまだにチュパカブラスに関連する多数の情報がやり取りされている。インターネットは異なった文化的背景を背負った様々な人々が集い、メッセージを交換する場所である。それぞれのユーザが属す社会に固有の意味的広がりだけで記号を使用していたのでは、意志の疎通ができないはずである。だが、各ユーザはインターネットからダウンロードしたチュパカブラスという記号を自らの社会の意味体系のどこかに格納し再利用する、そしてまたその使用状況をインターネットにアップロードする。そうした情報の共有によってインターネットのユーザ、ひいてはそのユーザを介して世界中の人々がチュパカブラス伝説を語り継いでいるのである。そこで以下では、ラテンアメリカというある特定の社会的文化的世界に限定されない領域において、チュパカブラスという記号が人々にどのようなイメージを喚起し、また人々はその記号を用いてどのようなメッセージを発信しようとするのかを、インターネット空間を中心に考えてみよう。 まず、チュパカブラスという記号が現在どのように用いられているのかを確認しておこう。インターネットにおける検索サービスの草分け的存在であり、また現在でも主要なディレクトリ型検索サービスサイトの一つであるYahooには、2000年1月10日現在で17件のチュパカブラス関連ホームページが登録されている。また同じく、日本ヤフーには1件、スペイン語ヤフーには9件が登録されている。米国ヤフーはチュパカブラスChupacabraという項目を[科学]-[オルタナティブ]-[超常現象]-[正体不明動物]の下に設け、そこに7つのページを登録している。つまり、チュパカブラスはネッシーやビッグフットなどと同列に扱われている。また、超常現象を扱うビデオ会社や、地球外生命体に関して調査研究する機関、伝説の動物を扱った神話やフォークロアなどの項目にもチュパカブラスに関連するホームページが全部で9つ登録されている。 しかし、こうしたチュパカブラス関連ホームページの全てがチュパカブラスに関する情報を提供しているわけではない。チュパカブラスに関する情報を公開したり、あるいは逆に収集しようとするページがある一方で、チュパカブラスという記号を用いて商売をしたり、自己ピーアールをしようとするページが数多く存在する。上記9つのページの内4つは有名人の個人ホームページであり、そこにチュパカブラスに関する情報は一切ない。開設者が関心を持っているテーマとしてチュパカブラスを挙げ、他のチュパカブラスを専門に扱ったホームページにリンクを張っているだけである。また、AltaVistaのようなロボット型の検索エンジンでチュパカブラスを検索すると、3946件ものチュパカブラス記事がピックアップされた(2000年1月10日)。これらのページのほとんども、チュパカブラスという言葉は聞いたことがあるがチュパカブラスそのものには関心がなく、他人から聞いた不思議な話しとして文章の飾りないしはアクセントとしてチュパカブラスという言葉をページのどこかにあしらっただけのものである。 チュパカブラスという記号(シニフィアン)は明らかに本来の意味コンテクストから掛け離れたところで使用される例が増えていると言えよう。しかし、こうした記号の二次利用は何も最近に始まったことではない。チュパカブラスがマスメディアで取り上げられてから間もなく、チュパカブラスのイラストをあしらったTシャツなど様々なグッズが販売されていた。また、その珍奇さからチュパカブラスという言葉を個人のあだ名やハンドルネームなどの通称、あるいは音楽バンドやスポーツ・チームの名称に使用する例もかなり初期の段階から報告されている。そこで次に、チュパカブラス関連のいくつかのホームページに設けられたゲストブックへの書込みから、チュパカブラスという記号に付与されていった意味領域を分析してみよう。
チュパカブラス・メッセージボード ここで取り上げるのは、「ラ・チュパカブラ:エイリアンか新種の生物か」[33]のチャットルーム、Zach Johnson氏が運営する「チュパカブラ」[34]のゲストブック、「エル・チュパカブラ・オンライン」[35]のメッセージボードの3つである。「ラ・チュパカブラ」はすでにサービスを停止しており、アクセスできない。ここで取り上げるのは、筆者が1998年2月にアクセスした際にダウンロードした内容によるものである。このチャットルームには1996年3月12日から1998年2月までの間のおよそ1350のチャット記録が公開されていた。「チュパカブラ」ゲストブックは同じく1996年に始められたもののようであるが、サイトの制約から書き込み数が250に制限されており、新しいメッセージが追加されるたびに、古いメッセージから削除されてしまう。筆者が入手し得たのは1998年6月19日から執筆時点(2000年1月末)までの約300の書込みだけである。「エル・チュパカブラ・オンライン」メッセージボードには1999年3月28日から執筆時点までおよそ150のメッセージが登録されている。ただし、最初の書込み番号が205になっているので、それ以前にも何らかの書込みがあったはずであるが、公開されていない。 これらのホームページの中では「ラ・チュパカブラ」チャットルームが最も古い。また、同チャットルームはスペイン語による書込みが多いこと、そしてリピーターが多いことが他のページとは異なる大きな特徴である。これらのメッセージボード[36]への書込みは、(1)チュパカブラスの目撃情報およびメディアが報じたチュパカブラス情報等に関する二次情報、(2)チュパカブラスの存在をめぐる議論、(3)チュパカブラスに対する個人的心情の吐露等に大別することができる。特に、「ラ・チュパカブラ」チャットルームはチュパカブラスに関するニュースが世界を駆け巡り始めた、まさにその時期に開設されたものであるため、世界各地からチュパカブラス出現に関する情報や目撃情報が多数寄せられた。ところが、市井におけるチュパカブラス熱が収まっていくに連れ、チャットルームへの書込みは3番目の個人的な感情の吐露、特に猥談へと重点を移していく。こうした状況を評して、グレート・サイヤ人を名乗る人物は次のような書込みをしている。 「メッセージの多くはチュパカブラスとは関連がないものだ。多くは冗談を言ったり、下品な欲求を述べるためにこのサイトを使っている。たとえば、美人娼婦フアナ・ラ・クバナ(キューバ女性フアナ)や彼女に返事を出している連中がそうだ。このサイトは『チュパカブラス』に関して議論する場であって、自分の欲求を満たそうとする人たちのための場ではないはずだ。そういう人たちはwww.bell.acos.comのようなサイトにでも行ってもらって、このサイトには関わらないで欲しい。」(1996年11月25日) しかし、この書き込みそのものに対する反論も手伝って、フアナ・ラ・クバナはこのメッセージを無視し、以後1997年8月までにさらに9回の書込みを続ける。そもそもグレイト・サイヤ人に諌められるまでの彼女の書込みメッセージのタイトルは次の通りであった。「誰か手伝って」(1996/9/9)、「背中が痛いの」(1996/10/12)、「フアナ・ラ・クバナのパイロットであるホルヘに」(1996/10/14)、「ハンサムな人」(1996/10/28)、「私とやりたい男たちみんなに」(1996/11/5)、「フアナ・ラ・クバナからガバチョへのメッセージ」(1996/11/22)、「ガ・バ・チ・ョ」(1996/11/23)。チャットルームを使わずにフアナ・ラ・クバナ本人に直接メールが送られた場合もあったようなので、どのようなやり取りがあったのかは定かではないが、最初は軽い冗談だったものが他の人の返信につられて次第にエスカレートして行く様子がメッセージ・タイトルだけからでも明らかである。 しかし、フアナ・ラ・クバナが猥褻な書込みを始めた最初の人物だったわけではない。性的ニュアンスを帯びた書込みはフアナ・ラ・クバナ以前にも散見された。たとえば、「ハンサムで独身のチュパカブラス求む」(chupachoncito, 1996/6/10)、「やりてー」(Chichi Caliente, 1996/8/28)、「濡れた貝、吸います」(NACHO, 1996/8/28)、「もっとやらせろ!」(Maria La Cachonada, 1996/8/29)などがある。フアナ・ラ・クバナとその挑発者の登場以前は散発的でしかなかった猥談が彼らの登場以降急速に拡大し、書込みの大半はおよそチュパカブラスとは関係のないセクシャル・ジョークで占められるようになって行く。さらに、フアナ・ラ・クバナの太鼓持ちを務めたエル・パドロテやエル・バナノたちの「女、求む」といった内容の書込みが行なわれた1997年11月以降、チャットルームにはセクシャル・パートナーを求める書込みが無数に行なわれるようになり、もはやチュパカブラス情報をやり取りする場としての機能は完全に失ったかのようであった。「ファック・ユー。この気違いラテン人たちめ。(「先生」、1997/11/05)、「糞食らえ、ラテン人ども」(Lupe Trevino、1997/11/20)といった罵りを残すだけの書込みにもそうした状況は如実に表われている。おそらく、それゆえに、このホーム・ページは間もなく閉鎖されることになったのであろう[37]。 「チュパカブラ」ゲストブックにはUFOに関連した書込みが多く、現在までのところ、「ラ・チュパカブラ」チャットルームの末期のような猥談の無法地帯化は起きていない。しかしながら、時折ではあるが、依然として次に示すような、チュパカブラスに引っ掛けたセクシャル・ジョークや特に意味のないセックス・タームが書込まれることがある。
名前: <a href="mailto:your ass">kyle mason
名前: goat_master ただ、このメッセージボードの利用者の多くは一見客であり、こうしたセクシャル・ジョークを自らが参加した大きな物語に発展させようとする利用者はほとんどいない。そうした書込みを意図的に無視しているかのようですらある。ゲストブックは本来、ホームページの利用者間でのメッセージの交換というよりは、ホームページの利用者からホームページのオーナーへの一方的なメッセージの送付を目的としたものであるという点では、各メッセージの送信者が他人のメッセージに特に注意を払う必要はない。その意味では、このメッセージボードにおけるセクシャル・ジョークは、それを書込んだ本人の性的欲求を発散させるためのオナニーのようなものだ。もちろん、それは公開の場を利用したものである以上、単なる自慰行為ではなく、他人の存在を意識することにおいて成立するナルシスト的な挑発行為であることは言うまでもない。 一方、「エル・チュパカブラ・オンライン」メッセージボードは本来、利用者間でのメッセージの交換を目的とした場である。ページの表示も、メッセージとそれに対するコメントとの関係を明示的に配置するスレッド表示がデフォルトになっており、あるメッセージに対して利用者がコメントを付けやすいような設計になっている。しかしながら、同一人物が2回以上にわたって書込みを行なった例は14件程あるものの、これら複数回の書込みは全て短時間の間に行なわれたものである。つまり、利用者のほとんどはネットサーフィンの途中にたまたま立ち寄ったこのページに個人的なコメントを記していくだけで、もう一度戻ってくることはほとんどない。彼らは自分の残したコメントが物語として展開していくことをほとんど期待していないのだと言えよう。その意味で、このメッセージボードの利用方法も「チュパカブラ」ゲストブックの場合と、基本的には同じである。 このメッセージボードに書込まれるメッセージも傾向としては「チュパカブラ」ゲストブックと同じである。ただ、「チュパカブラ」ゲストブックに比べて、チュパカブラスとの遭遇を真しやかに語るものが多い。また、そうしたメッセージが多いがゆえに、一方でチュパカブラスの存在を疑問視したり、そうした語り口そのものを茶化したりする書込みも多数行なわれている。こうした点は、このメッセージボードの趣きを「チュパカブラ」ゲストブックとは多少異なったものにしている。全体としては、チュパカブラスを題材とした都市伝説を語り合うフォーラムの様相を呈していると言えよう。 チュパカブラスが社会的なニュースからフォークロアへと移行する過程で、伝承の経路は主としてUFO関連のメディアに限定されてきた。チュパカブラスがそもそも社会的現実性を持ちえない日本では、チュパカブラス伝説はそのニュースが伝わってきた当初からUFOとの関係でメディアに取り挙げられてきた。しかし、一般には社会的現実性を失う過程で、チュパカブラスはUFOや超常現象などを扱うフォークロアの中に活きづいて行ったのである。現在、人々はそういったものを介してしか、チュパカブラスに出会うことはなくなっているのである。 その中で、米国で製作されているテレビ映画『Xファイル』はチュパカブラス伝説をUFOマニア以外の一般の人々にも伝承する上で、重要なメディアとなっているようである。インターネットのチュパカブラス関連ページはチュパカブラス伝説を伝承する上で確かに重要なメディアではあるが、ホームページが何臆と存在するインターネット空間で、ネットサーファーがチュパカブラスに遭遇する確率は決して高くない。むしろ、一人の人間がすべてのビデオ・タイトルをチェックできるレンタル・ビデオ屋の方が、チュパカブラスに遭遇する機会は圧倒的に多いはずである。そして、ビデオから存在を知らされたチュパカブラス伝説に興味を抱いた者が、インターネットのチュパカブラス・ページにアクセスする方が一般的なのである。実際、どのメッセージボードにも「UFO」に混じって、「Xファイル」の文字が多数見かけられる。
チュパールの意味論 以上が、インターネット上におけるチュパカブラス伝説の語りの変遷と現状である。ある特定の社会あるいは個人にとっての経済的な危機や心理的な不安を、人間に操作可能なシンボルとして一旦具象化し、闇の世界に再び葬り去ることを目的として作り出されたはずのチュパカブラス[38]は、言語化された時点でもはや消去不可能なものとして我々の意味世界に組込まれてしまう。チュパカブラスとは、スペイン語の「吸う」(chupar)と「山羊」(cabras)という2つの単語を組み合わせて作られた造語である。それゆえ、チュパ・カブラス(「山羊を吸う」)という言葉はチュパカブラスの登場以前にも存在し得たものである[39]。言語的運用のレベルにおいては、チュパカブラスはチュパ・カブラスという前シンボル的な意味世界に後退する可能性を完全に脱ぎ捨てたわけではない。特に、スペイン語話者やその語源を知っている者にとって、チュパカブラスがチュパ・カブラス化する可能性は極めて高い。実際、「ラ・チュパカブラ」チャットルームでは、ChupaCabraやChupa Cabras、chupa the cabraといったタームが頻繁に用いられている。また、chupabuyes(牛吸い)、chuparatones(ネズミ吸い)、chupachivos(子山羊吸い)、chupacobra(コブラ吸い)、chupagatas(メス猫吸い)など、吸う対象を山羊から他の動物に置き換えたタームも多数使われている。 スペイン語のチュパールは日本語の「吸う」「しゃぶる」「なめる」「(利益などを)巻き上げる」などに相当する意味領域を指す言葉である。また、このチュパールは必ずしも生物が生存に必要なエネルギーの確保のために食行動を取ることを意味しない。むしろ、吸うという行為において楽しむ様を喚起するものである。スペイン語話者はチュパ・カブラスをこうしたチュパール動詞の意味範囲において自由に変形することができることになる。つまり、吸うものは必ずしも生き物の血でなくても構わないし、また実際に吸うものがなくてもしゃぶるだけでも構わない。それゆえ、「ラ・チュパカブラ」チャットルームでは、chupacuellos(首吸い)、chupacobbler(コブラー吸い)、chupahielo(氷吸い)、chupatela(布吸い)、chupabbs(BBS吸い)、chupacable(ケーブル吸い)といったタームも使われている。ただし、吸われる対象を単数形で表現した場合、それはスペイン語では別の意味を持つ。たとえば、chupacableはチュパ・ケーブルすなわち「チュパカブラスを扱ったケーブル」、chupabbsはチュパBBSすなわち「チュパカブラスBBS」を意味する。chupabbsはaction="chupabbs.cgi"というhtmlコマンドの一部として記述されたものであることからしても、chupabbsはbbsを吸うchupaではなく、chupaを扱うbbsであることは明らかである。しかし、こうした言葉の使用者は両方の意味を想像しているはずである。 また、「ラ・チュパカブラ」チャットルームがセクシャル・ジョークで埋めつくされて行ったのも、スペイン語話者にとってこのチュパールという単語が性的なコノテーションを帯びたものであるところに大きな理由があったはずである。たとえば、chupabonito(ハンサム吸い)、chupa chochas(娘吸い)、chupapollas(小娘吸い)、chupamadre(ママ吸い)のように、チュパールする対象にセクシャルな存在を想定したもの[40]だけでなく、chupa-cu(お尻の穴吸い、ポルトガル語)、さらには、chupa nalgas(お尻吸い)やchupagrande(でかいもの吸い)など性器を直接的に表現したタームも多数使われている。「濡れた貝、吸います(quiero conchas mojadas para chupar)」や「男のを吸っても、俺は男だ(chupar vergas soy hombre)」などの表現は、こうしたチュパカブラスという単語の変形操作の連続線上に位置するものである。 チュパカブラス伝説がセクシャル・メッセージに転換する上で、チュパールというスペイン語の動詞が元々持っていたこの意味の広がりが重要な役割を果たしたことは言うまでもない。しかし、そうした言葉遊びが可能であったのは、ネットユーザたちにとってチュパカブラスが血を吸う現実の存在物ではなかったからに他ならない。インターネットという匿名の空間に限定する限り、チュパカブラスだけでなくネットユーザたち自身も仮想のものである。その仮想性ゆえに様々な想像が行使可能であった。また、チュパカブラスをチュパ・カブラスに解体し、カブラスを別のものに置き換える際に、つまり目的語の必要な他動詞としてチュパールを運用しようとする時、彼らは誰(チュパールする主格)が何の目的でそれを吸おうとするのかを考えねばならなかったはずである。チュパカブラスでは吸血の意図は野獣性、悪魔性、地球外性などによって隠蔽されている。しかし、人間が何かを吸おうとする際、その意図は可視的かつ人間にとって実行可能なものでなければならない。そうした吸うことの目的を可視化する過程でネットユーザたちが作り出したものが、性的欲望あるいは単に個人の欲求を満たすためにチュパールするというフィクションだったのである。 動物の血を吸う生命体としてのチュパカブラスは人々の不安の解消とともに姿を消していった。動物がチュパカブラスに襲われて血を吸われたという書込みはメッセージボードからは途絶えて行ったのである。インターネット空間に残されたチュパカブラス(ホームページ)も何かを吸い続けなければ消滅していったはずである。地球外生命体に姿を宿したとしても、それはオカルト信者だけが見ることのできるものであり、一般の人々の眼前からは姿を消して行くはずである。だが、「ラ・チュパカブラ」チャットルームは、チュパカブラスを性的欲望のメタファーとしてヴィヴィッドに再生させたのだと言えよう。その再生工場が閉鎖された現在でも、そこで作り上げられた、人間の欲望(特に性的欲望)に促されるがままに何かを吸おうとするチュパカブラスの命脈は確実に保たれている。仮に「ラ・チュパカブラ」チャットルームがなかったとしても、このチュパカブラスは人間の個々人の再生工場で再生されていたのかもしれない。 チュパカブラスはある意味で人間の欲望に住み付いてしまったシメールである。おそらく、人間の欲望が消滅しない限り、チュパカブラス伝説が忘れ去られることはもはやないだろう。だが、「ラ・チュパカブラ」チャットルームにおけるチュパカブラス・ジョークは単なる個々人の欲望を満たすためだけのメッセージ群ではなかったことを最後に付け加えておかねばならない。それらは、チュパールする対象によって示されるチュパール行為の反道徳性・反社会性・非人間性をも指し示すものであった。たとえば、chupabbsやchupacableなどといった表現は、ネットユーザがインターネットによって利用され搾取されている様を如実に言い表わしている[41]。チュパールに引っ掛けた様々なジョークは、あるものごとの反道徳性や反社会性を我々にかいま見させ、そのあるべき姿について考えさせるための有効なテクニックなのである。
参考文献 Corrales, Scott. 加藤隆浩 小松和彦 中沢新一 並木伸一郎 Nutini, Hugo G. & John M. Roberts. Trull, D. ワシュテル、ナタン
(2000年2月14日) [1]本稿は東北大学学長裁量経費による平成11年度教育・研究共同プロジェクト「記号の成立・伝播およびその変容に関する研究」における研究成果の一部である。 [2]東北大学言語文化部助教授 [3]ただし、アンデスの身体観において脂肪は血とほぼ同義である。cf. ワシュテル 1997年、79頁。 [4]チュパカブラスの探索は各地で行われた。しかし、チュパカブラスの汚名を着せられてある特定の個人がスケープゴートにされたのは、後述するメキシコの元大統領の例だけである。 [5]http://www.princeton.edu/~accion/chupa2.html [6]http://www.princeton.edu/~accion/chupa21.html [7]Ibid. [8]http://www.princeton.edu/~accion/chupa23.html [10]http://www.desert.net/disk$ebony/tw/www/tw/05-30-96/cover.html [11]http://pfmonaco.tia.net/chupa/index.html [12]http://www.princeton.edu/~accion/chupa2.html [13]http://www.strangemag.com/mystcreat.html [14]http://www.latinolink.com/news/0510hgoa.html; http://www.princeton.edu/~accion/ chupa22.html; http://www.geocities.com/Area51/Vault/1259/chupacabra.html [15]http://goodnet.com/~amlight/chippy.htm [16]http://www.geocities.com/Area51/Vault/1259/chupacabra.html [17]http://www.strangemag.com/mystcreat.html [18]http://www.chron.com/content/chronicle/page1/96/05/13/mexico.html [19]http://www.latinolink.com/news/0412chup.html; http://www.princeton.edu/~accion/ chupa15.html; http://www.geocities.com/CapitolHill/1033/scpr.html [20]http://www.desert.net/disk$ebony/tw/www/tw/05-30-96/cover.html; http://www.u.arizona.edu/~jcook/chup.html [21]サンテリアなどカルト集団の信者たちが宗教儀式のために動物の血を抜いたとする説もある。 [22]Bob Buck "El Chupacabras – Terror of Puerto Rico Myth or Beginning of a New Reality?" (http://www.u.arizona.edu/~jcook/chup.html). [23]http://www.latinolink.com/life/1217chu.htm; http://www.u.arizona.edu/~jcook/chup.html; http://www.goodnet.com/~amlight/chippy.htm [24]http://www.sfgate.com/offbeat/buzzcuts3.html; http://www.princeton.edu/~accion/ chupa19.html; http://www.sjmercury.com/news/local/goats729.htm [25]http://www.princeton.edu/~accion/chupa19.html; http://www.latinolink.com/news/ 0410chup.html [26]http://www.chron.com/content/chronicle/ page1/96/05/13/mexico.html [27]スペイン語圏の中でも、農村部などの主に貧困層の人々がチュパカブラスに恐怖感を抱いたことから、チュパカブラス伝説の流布は貧困および教育レベルの低さに対応しているという意見もある。たとえば、Corrales 1997:128。 [28]http://www.desert.net/disk$ebony/tw/www/tw/05-30-96/cover.html [29]ラテンアメリカにおける古くからの吸血鬼信仰は、新大陸にもともと生息する吸血コウモリの生態に起源があると、D. Trullは主張する(Trull 1996)。 [30]http://www.nmsu.edu/~frontera/jun96/3jun2196.html. [31]Neftali Olmo-Terronは、心理学的な見地から、人間が集団として行動する時には悪を外在化する傾向があると論じている。この悪の外在化のプロセスは、共同体が自らを客体化するプロセスであり、そこに生成される語りは共同体の内部に向けられた言説である。 [32]このコンテクストにおいて、吸血鬼は低開発国を搾取する資本主義のイメージと重なる。たとえば、D.Trull 1996参照。 [33]http://www.bizcom.com/bbs/chupacabra/ [34]http://www.earthlink.net/~mej023/ [35]htt://www.rocketcharged.com/chupa/ [36] チャットルーム、ゲストブック、メッセージボードと名称は全て異なるが、現実には利用者全員に公開されたメッセージ・システムなので、以下本稿では、特に注意書きがない限り、これらの総称としてメッセージボードという用語を使用するものとする。 [37]アメリカでは1996年2月8日に、未成年者に対するわいせつな表現などを規制した通信品位法が制定されている。しかし、「ラ・チュパカブラ」チャットルームの閉鎖が同法案によってクローズアップされた通信の品位を意識したものであったかどうかは定かでない。なお、同法案は97年6月26日、最高裁によって違憲判決が下されている。 [38]それは、同一性に基づく合理主義的な西欧近代思考が排除しようとしてきた非論理性の極めて現代的な表現形式である。人間が元々管理コントロールできない存在や力を野蛮かつ邪悪なものとして記号化することで人間世界に定立させ、科学というロゴスの力に従属させようとする。それが西欧近代人にとっての究極の悪魔払いの方法である。 [39]スペイン語では動詞の3人称単数形+名詞の複数形で、「〜をする者」という語彙を形成する。その場合、この名詞は男性名詞の単数形として扱われる。よって、チュパカブラスはスペイン語ではel chupacabrasでなけれならず、la chupacabraやel chupacabraは標準スペイン語文法では間違った表現である。 [40]chupagatasやchupacabrasなどにおける動物(gatas雌猫、cabras雌山羊)も女性を表わすメタファーである。 [41] メッセージボードに時折書込まれる、罵倒するためのセックス・タームも、こうした批判的な意味合いを帯びているはずだ。 |