ことばでボケを防止する

川島 隆太 (東北大学未来科学技術共同研究センター教授)


  東北大学21世紀COEプログラム「言語・認知総合科学戦略研究拠点」では、人間が行動したり考えたりしているときに脳のどこがどのように働くのかを調べることが可能な「脳機能イメージング装置」を用いて、脳と「ことば」の関係の研究を推進しています。これらの研究の中で、文章を黙読したり音読したりすることで、脳の多くの場所、特に人間として最も大切な機能を司っている前頭葉の前頭前野が活発に働くことを発見しました。そこで、私たちは、読書や音読が脳を鍛え、子ども達の脳を健全に発育させ生きる力をつけ、成人の脳の健康を増進し、高齢者の脳機能低下(ボケ)を防止できるのではないかという仮説をたて、いくつかの実験を行ってきました。その結果、音読や読書の習慣が、成人の脳を鍛えて記憶力などを増進させ、また高齢者の脳機能の低下を防ぎ、痴呆症高齢者の痴呆症状を緩和することを証明いたしました。この講演では、人間の脳の仕組み、ことばと脳の関係、そして読書や音読を用いた脳の活性化の取り組みについて解説をします。さらに、その他の脳機能イメージング研究からわかった、日常生活の中で脳の健康を維持向上させる工夫について説明をします。