人はどうして言葉をしゃべるようになったのか
−進化心理学からの視点


岩崎 祥一 (東北大学大学院情報科学研究科教授)


 人間の言語は、他の動物には類似の機能がないユニークな能力です。言葉を話すということは、人間にとってはあまりにも当然なことのように思えるかも知れませんが、人間に最も近いサルの仲間であるチンパンジーやゴリラも自然の状態では言葉を操ることはできません。このことから、この能力が人類の進化の過程で獲得された比較的新しい能力だということが分かります。それでは、なぜ人間は言葉を話すようになったのでしょうか。また、それはどのような役割を果たしているのでしょうか。なぜわれわれ人類は言葉を話すようになったのだろうかという問題を、進化心理学、脳の左右の機能差の研究、認知機能の性差の研究などから得られた証拠をもとに考えてみます。