「コミュニケーションの多層性と言語変化」

井上逸兵
慶應義塾大学

 

我々が日常しばしば誤解しあう理由の一つは、一方の意図する意味が一義的に他方に伝わると過信することだ。言語によるメッセージも字義的な意味以外に多くのことを多層的に伝達している。コミュニケーションの多層性が生み出す諸事象を、相互行為の社会言語学、さらにはコンテクスト化、コミュニケーションの資源に着眼しながら「コミュニケーションの生態学」という観点から見てみたい。特にサイバーコミュニケーションを含めた比較的最近の言語使用やコミュニケーションの多層性が生み出す言語変化の一端を材料として論じる。