脳と外界のインタラクション:頭頂連合野の機能
Interaction between the brain and the external world: Neural function of the parietal cortex


泰羅 雅登 
日本大学・大学院総合科学研究科/日本大学・医学部・応用システム神経科学

 

霊長類の視覚情報処理経路には大きく分けて 2 つの経路があることはよく知られた事実である。頭頂連合野は背側視覚経路に位置する、視覚の高次連合野であるが、頭頂連合野損傷患者の症状をみるときわめて多種多彩である。もう一方の視覚処理経路である腹側視覚経路に属する側頭-後頭連合野の障害が失認を中心とする認知障害であるのに対して、頭頂連合野の障害は半側空間無視、立体視の消失に代表される視覚系の知覚・認知障害だけでなく、構成失行、操作運動の障害など行動に障害が現れる点に特徴がある。すなわち、頭頂連合野は単に外界の視覚情報を取り入れるだけでなく、それを行動に利用できる形に変換する場、つまり脳の内と外との接点の場所と考えられる。本講演では、サルでの神経生理学研究、ヒトでの機能的イメージング研究から得られた、頭頂連合野における操作運動の視覚的制御機構、そのための視覚情報処理、特に三次元形態の情報処理について、そして自身の行動に関連するナビゲーションの神経機構について述べる。