ロボットとの対話におけるパラ言語情報の利用
 The use of para-linguistic information in a dialogue with a robot

小林哲則 (早稲田大学理工学部電気電子情報工学科)
Dr Tetsunori Kobayashi, Waseda University

 

会話は言語情報の伝達だけによって実現されるものではない。音声言語の伝達行為に付随して声質,表情,身振りなどに発話者の態度,状態などが現れ,これが伝達・受理されることによってはじめて円滑な会話が成立する。このような,音声言語の伝達行為に付随して生じる言語以外の情報であって,言語情報の伝達を支えるために機能する情報はパラ言語情報と呼ばれる。パラ言語情報を扱うシステムは,音声チャネルでのパラ言語の表出・受理機能が必要とされるだけでなく,視覚チャネルでの表出・受理機能が必要となり,マルチモーダルなものとなる。本講演では,このパラ言語を扱う対話システムを,人間形のロボットで実現した例を紹介する。ロボットの身体は表出機構として,視覚システムはその受理機構として相応しく,ロボットは対話システムとしてうってつけのシステムといえる。紹介するロボットでは,頭部の動きと韻律によって対話調整が行われるとともに,言語情報では表しきれない発話者の心情などが運ばれ,これらによって従来の対話システムには見られない豊かなコミュニケーションが実現されていることを示す。