ベトナム語の文法化現象:日本語や中国語との対照
Grammaticalization in Vietnamese: In Contrast to Japanese and Chinese


村上雄太郎(レーバンク−) 
茨城大学
Dr Yutaro Murakami, Ibaraki University


文法化の研究分野では、近年、Hopper and Traugott (1993)やBybee, Perkins and Pagliuca (1994)といった先行研究に触発されて、アジア諸語でも文法化の研究が盛んになってきている(Ohori 1998, 堀江2001, Lamarre 2002)。しかし、アジアの言語といっても、日本語や中国語、韓国語という、東アジアの言語 の研究が殆どであり、東南アジアの言語の文法化のメカニズムははまだ十分に解明されていないのが現状である。本発表では、東南アジア諸語の一例として、ベトナム語の文法化を考察する。具体的には、方向性の移動動詞の「来る」、「出る」や授受動詞の「くれる」、「もらう」や、獲得・到達を表す動詞などを取り上げ、日本語や中国語と対照しながら、ベトナム語の文法化の特徴を考察し、動詞としての用法から、前置詞、そして接続詞、取り立て詞としての用法への変化・転換の意味的・統語的な特徴を明らかにする。