講演1:「脳の言語機能理解の筋道を探る」
脳の言語機能に関しては脳機能の fMRI 等による画像化、脳波・磁気刺激等による脳活性化の時間経過測定等により有効な知見が得られているが、これらの観測結果のみからは活性化脳部位がどのようにして特定の言語機能を営んでいるかは殆ど分からない。一方、サルやネズミ等の脳の局所部位に多重微少電極を挿入してニューロン集団の活性化の様子を調べる実験から多くの興味ある事実が明らかにされてきているが、人間に対してこの種の実験ができないために、言語機能を支えるニューロン集団の活動の様子を直接調べることは困難である。
この講演では、 1 .脳機能は単純な脳機能の複雑な組合せにより理解できる、 2 .単純な脳機能は哺乳動物に共通している、という仮設に基づいて、ニューロン集団の機能として言語機能を理解する道筋を述べる。 19 世紀後半の物理学における熱力学から分子・原子論に基づく統計力学への移行の道筋と同様に、ニューロン集団の機能として言語機能を理解する道筋が何れは成功することを予期している。講演では単純な脳機能に関する最近の知見を概括した後に、複雑な脳機能の具体例として、単語の音声認知、単語から文の生成機構等をとりあげて少し考察してみる。
参考文献:
脳は物理学をいかに創るのか、岩波書店、 2004 、武田暁
Developement of Physics, EOLSS(Encyclopedia of Life Supporting Systems, UNESCO, Vol.6, 2004, Gyo Takeda
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